59号 「古儀継承」
令和元年末から全世界で蔓延した新型コロナウイルスの影響で、生活は一変しました。
当宮においても日々「終息祈願祭」を斎行しながら、通常の祭典は勿論、例祭や新年を迎えるにあたり様々な安全対策を講じてきました。
そのような中、参拝される方、参拝を控える方、混雑する時期を避けてお参りされる方など様々な崇敬心を八幡様へ届ける為に神職・仕女等は祭祀の厳修を第一として乗り越える所存です。「光陰人を待たず」とも申します。この数年を後から振り返った時に意味のある時間にするためにも、常に毎日を丁寧に八幡大様に感謝しながら過ごして参りましょう。
大崎八幡宮松焚祭は小正月の1月14日に行われます。当日は混雑が予想されますが、「御神火」は翌15日まで燃え続け、無病息災の御利益があると言われています。是非、お参り下さい。※令和5年松焚祭ライブ配信予定。詳細は大崎八幡宮のSNS(フェイスブック、ツイッター)でご案内いたします。
Q神社の本殿はいつも工事しているように感じますが、何か理由があるのでしょうか。
A当宮の社殿は国宝に指定されており、国の重要文化財です。
重要文化財の修理は文化財保護法により所有者や管理団体が行うことが定められています(第34条2項)。
管理や修理に関しての費用については、原則として所有者や管理団体が負担しますが、負担が大きい場合は国が補助金を交付します。(第35条)。
建造物の修理は素材や材質などにより周期の幅が異なりますが、たとえば一般的な木造建造物であれば約50年周期で本格的な修理を行う必要があるなど、一定の年数が経てば修理が必要です。しかしながら、多くの修理箇所がありながら資金調達の限界などで適切な時期に修理を行わないでいると、文化財としての価値が回復できないところまで減少してしまいます。
そのような事にならないよう、当宮では資金に合わせた定期的な修理を毎年、随時検討して実行しています。又、修理のための人材や材料、用具なども差し迫った課題となっています。建造物に限らず美術工芸品を含めた多くの文化財は、先人たちにより培われた技術により支えられています。文化財の維持継承には、どのような内容であっても熟練の技が求められ、手間暇がかかります。貴重な技術継承の場であるにも関わらず、時代の変化に伴って一般的な需要の著しい減少により後継者が絶えてしまうと、文化財はもとより、我が国の文化の衰退を意味することになります。
定期的な修理と保存は技術の維持と発展を含めた文化財所有者の大切な責務と考えています。当宮の文化財建造物維持における社殿修理は大まかに三つに分類されます。社殿の躯体を維持する「木工事」、柿蘇の屋根を維持する「屋根工事」、そして景観や彩色を維持する「漆塗彩色工事」になります。「木工事」「屋根工事」につきましては、修理の周期が約30~70年と比較的間隔が空くのでその都度、大規模な修理が行われます。しかしながら「漆塗工事」に関しては、1年サイクルでの細やかな工事を実施しております。
理由としては、社殿外装に施されている漆塗装の被膜は紫外線や風雨に対して脆弱であることや、使用が義務付けられている国産の漆の生産鼠が少なく、社殿全体での施工が困難であることから、景観を損ねないよう綿密な計画の下に補修箇所を変えながらの維持が重要と考え、結果として通年のエ事が必要になります。社殿の全体的な修理は御鎮座四百年記念事業により平成16年に一旦終了していますが、その後も「漆塗工事」を主体とした維持管理を目的とした工事をほぼ毎年おこなっています。加えて前述の修理より約20年が経過し、柿葺きの葺替工事も視野に入ってまいりました。
今後も社殿全体をご覧いただける期間としては一年を通じそれほど多いものではございませんが、今一度「文化財」としての価値をご理解いただければと思います。