日本人の日常生活の中で、神社が重要な役割をもってきたことは今さらいうまでもありません。そこに祭られる神々や社殿の形式などは違っていても、人々の生活とかかわりのあるところには必ずといってよいほど、その土地や人々が氏人を守護する神社が祀ってあり、その地域共同体の精神的シンボルとなっています。

遠くからもそれとわかる神社の鎮座する木立は、「鎮守(ちんじゅ)の森」として昔から人々に親しまれ、畏敬を受けてきました。神社の参道には鳥居があり、そこが神域であることを示しています。鳥居をくぐると左右に狛犬(こまいぬ)が置いてあります。魔よけのため置かれる獅子に似た一対の霊獣で、古くから神前に置くことが行われています。また手水舎があり、神前に進む前に清らかな水で手を洗い口をすすぎ心身を清めます。

境内には舞殿(神楽殿)や御輿蔵(みこしぐら)があり、さらに進むと御社殿が木立の中に鎮まりまし、地域の人々の祈りや願い、祖先から受け継いだ歴史の重みやぬくもりが無言のうちに伝わってきます。このような境内の配置や森の姿は、一応の定形はあるものの、地形を生かしてそれぞれ地方独特のものをつくり出しています。

このように神社は、単に社殿ばかりでなく周囲の森を広く取り込んで自然環境と一体となっています。このため、鎮守の森は神域として長く保護され、立派な森林をなしているところが多くみられると共に、その地域の気候や自然環境を表徴するような植物層が残されています。

はるかなる祖先から受け継ぎ、私たちの心のよりどころであり、また子孫に伝えなければならない貴重な「鎮守の森」の緑を大切に守り育てていきましょう。