■06号
鳩の声
深緑はますます濃く境内をつつむ頃となり、季節はまさに青山垣籠もれるすがすがしい季節を迎えた。
その鎮守の森からはいつも、馥郁とした香りを発散しているという。今の時期境内から町に出て鎮守の森を眺めると緑よりやや青みがかって見え、古来より「青山」という表現をしてきたが、それは樹木が発散する揮発性の物質で包まれているそうだ。その本体は植物を水蒸気で蒸留すると得られる揮発性の油である精油の主要成分である「テルペン」と総称される物質であるといわれている。その境内で職員は毎日いわば森の精気、緑の精気を頂いて清浄なる境内保持のため清掃に徹するのである。
さて、当大崎八幡神社は本年御鎮座390年という記念すべき御年を迎える。
安土桃山時代とはいかなる時代であったのか。当初はこの上もなく活気にみなぎった時代で、地方の大名が台頭し、自由、豪華絢爛を誇った時世で、豪放な精神が生み出されたと言えよう。
当神社は仙台藩祖伊達政宗公が慶長6年仙台開府の後、領内鎮護のため当代一流、天下無双の匠人といわれた紀州刑部左衛門国次等の大工、棟梁たちによって建立されたのであった。
御造営の目途は豪華絢爛たる桃山文化を導入し、伊達六十二万石の偉容を示し、みちのく仙台に大きな拠点を築くという雄大な構想を実現させることにあった。
この記念すべき御年、八幡大神に使える者として思うことはやはり真剣に祈る氏子崇敬者、参拝者を目の当たりにして大神様の広大無辺なる御神威を改めて実感している次第だ。
夏、動物が本来有する機能は10パ−セントくらい下がるそうであるが、鳩の子等はそんなことには無縁である。八月十二日夕刻には御鎮座記念祭と雅楽の夕べ、続いて九月十四日より十六日までの御鎮座記念大祭と各神賑行事の準備で忙しい日々が続くのである。
(平成8年6月)
八幡宮Q&A
Q:大崎八幡神社の例大祭、その他大祭、月次祭等各祭典ごとに巫女さんの御神楽が奉奏されていますが、どういう意味があるのでしょうか。
A:現在、例大祭その他大祭では巫女さんが行う舞は「浦安の舞」、月次祭では「萬代の舞」という二つの御神楽が行われています。
これらの神前神楽は広い意味では雅楽と言われています。その雅楽は七世紀から九世紀の間にアジアで栄えた音楽で、日本には八世紀に渡来し、編曲改作がなされ、純日本的なものとして成立、発展したという歴史があります。
先ず「浦安の舞」についてですが、我が国が紀元二千六百年を迎え、その奉祝のため昭和十五年十一月十日午前十時に全国の神社で執り行われたお祝いの祭典で、神前に全国一斉に奉奏されたのを基に、現在でも盛んに行われています。
御神楽は歌に重むきをなすもので、歌詞は、
「天地の 神にそ祈る朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を」
という昭和天皇様の御製をうたっており、浦安とは「心の安らか」という意味で、平和を祈る心が表現されており、神慮を慰め奉るものです。
また、『万葉集』など我が国の多くの古典には日本の国名を「浦安の国」と称えて表現しているのは風土が美しく平和であったからで、日本人の情感の正しい姿を御神前に披露するもの、ともいえるでしょう。
この御神楽の舞は前半は桧扇、後半は鉾鈴を持って舞うものとなっています。
次に「萬代の舞」についてですが、この舞は本年御鎮座三百九十年を迎え、その記念として作られたもので、原曲となった鎌倉・鶴岡八幡宮の「萬代の舞」に鶴岡八幡宮白井永二宮司様が
「みやぎのの 五百枝の神杉萬代に 御陰たれます 大崎の宮」
という御歌を詠んで頂きつくられたもので、月次祭等の祭典時御神前で奏されるものです。
本来は巫女さんによる四人舞となっていますが、春夏秋冬四季折々の花束を手に持って舞い、通常は二人舞にて奉仕されています。