■05号
鳩の声「あけましておめでとう」というのがお正月の挨拶のきまりになっているが、改まってなぜ正月がめでたいのか問われると即座に明確な答えをするのに窮する。
「新しき年のはじめに豊の年 しるすとならし 雪の降れるは」
万葉集の一首であるが、あらたなる年のはじめに降る雪を見て「これは豊年になる端兆だぞ」と詠んだ希望んい満ちあふれる心境が伝わってくる。今も昔も人々の心に変わりはない。
さて、子供達も指折り数えて待っているお正月であるが、その理由は今日、凧あげや独楽回しではなく「お年玉」にあるようだ。そこでこの「お年玉」について調べてみると一つ面白いことがわかる。実は「お年玉」の「年」は「穀物」「稲」「収穫」などの意を持つ。穀物の稔りが1年を周期とするので、時を計る単位として用いられたわけだ。正に日本人が自然に教えてもらった知恵と言えるだろう。
では「お年玉」であるが、語源は「稲玉」すなわち文字通り「餅」であったと考えられる。新しい年に豊かな実りをもたらす大年神様(お正月様)のご降臨を家族みんなで歓迎すると共に、大年神様の恩頼である「トシ」(数え歳の“歳”を指すのは勿論、“餅”の意もある)を賜り、万物と共に新たな若々しい生命を獲得して蘇ることができるのだ。故に国民挙って慶び、雑煮を食べながら祝うわけである。
この「トシ」についてもう少し述べると、2月17日に斎行される祈念祭(トシゴイノマツリ)も「トシ」を乞い祈る祭りということで、豊作を祈る重要な祭典であることがわかると思う。やや話が横道に逸れたが、お正月がおめでたいお話をもう一つ。
平成8年八幡様は御鎮座390年の記念すべき年を迎える。その奉祝行事として記念大祭や、記念事業等、今着々と準備を進めているところだ。新年も忙しい年となる。
我々神社の山鳩も神社の職員と共に新しい「トシ」を迎えるわけであるが、それは「年間最大行事」の訪れでもある。
節分が終わり、八幡様からのお年玉「福豆」をついばむ頃までは、羽を伸ばして「ポッ」と一息つくことなど出来ない。
(平成7年12月)