■01号
鳩の声
「石の上にも3年」とはよく言ったものだ。境内の四季折々の風情は、それなりの趣があってよいものであるが、入社間もない職員には、その風情を味わっている暇などない。
初めて開催した5月の「皐月祭」、6月「水無月の大祓式、茅の輪くぐり」、9月「例大祭」、霜月「七五三詣」そして年末年始の諸準備、この間にも毎月1日、15日には「月次祭」そしてその他の恒例祭、臨時祭、併せて地鎮祭、結婚式などの出張の祭典奉仕、ご社頭にあっては参拝者への対応、祭典毎の準備品の確認など覚えるだけでも容易なことではないし、3人の新入職員はやっと1年の3分の2が過ぎたところで年間最大の行事である「正月」が待ち受けるのである。
さて、私たちの日常生活のさまざまな場面で「数」に対する信仰を見ることができる。おめでたい「数」の中に「8」という」数字がある。この「8」という「数」は、古来より日本人にとって神聖なものを表わす絶対数であった。「八百万神」「八大竜王」そして「八幡さま」など日本の神々を表わすことばに「8」が冠せられることが多く、全宇宙を網羅した存在であることを示しているし、「大江戸八百八町」「浪花八百八橋」など数が極めて多いことを意味しており、その形状から「末広がり」といって現在でも喜ばれている。
ところで、八幡さまの鳥居にも「8」がある。それも話しかけてくる「8」である。一之鳥居と大石段上の三之鳥居に掲げられている「八幡宮」の篇額である。これは、仙台藩五代藩主伊達吉村公の揮毫によるもので、直筆による原画が今でも残っている。この「8」は二羽の鳩が相対峙した形で「八」の文字をつくっているが、これを「雌雄」と見るか「親子」とみるか時としてちがっている。
この他にもご社頭でよく聞く数が「3」である。「裸参りは3年続ける。」とか「本殿の周りを3回廻る。」などであるが、この「3」は「お産」に通じ「願い事がかなう」とされるからである。私もそうであったように、この杜に住みついた頃には、巣を守ることで精一杯だった。
新入職員3名も「3年」たてばこの境内の草木1本1本が、そして旧市内でも数少なくなってきたこの杜に住む鳥や動物の話し声が聞こえてくることだろう。(平成5年12月)