43号

鳩の声

今年も早いもので残すところわずかとなり、特に朝夕は冷たい木枯らしが吹きわたり冬の訪れを境内の杜にも感じるようになりました。

『天地(あめつち)の神にぞ祈る朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を』
浦安とは心の安らかという意味で、平和を祈る心の舞であり、古く日本の国名を浦安の国といったのは風土が美しく平和であったからであります。

先日、有名グループの芸能人が参拝され、「八幡宮の縁起だるま」をメンバー全員分授与させて頂き、コンサートのステージで披露され、ちょっとした話題になりました。

現在、大崎八幡宮の「縁起だるま」は仙台市内の本郷久孝氏の手作りでお納め頂いておりますが、「仙台のだるま」は今から180年程前の天保時代に仙台藩士松川豊之進により作られたのが始まりとされ、「松川だるま」と呼ばれています。松川氏は仙台藩の下級藩士で参政書記を務めていた傍らに武士の内職として張子細工も作っていました。

その後、本郷家の5代目 久三郎氏が松川氏の弟子となって張子職人となり、その子孫である久孝氏の手によって伝えられています。

その制作は手作りの工程と地元の材料に拘っていると本郷さんは言います。張子のだるま作りに欠かせない木製の「型」は古くから伝わる物を使用し、木型に張り重ねる和紙は仙台の柳生和紙を貼り付けます。和紙ののり付けには「角叉(ツノマタ)」という宮城県の海藻を使っていますが、東日本大震災の影響で一時入手困難となり、止む無く北海道から仕入れた「角叉」を混ぜて使用しましたが、やはり地元のものを使いたいと現在では県内産を使用しています。

作業の分担は主に下地作業を奥さんが行い、顔かきなどの仕上げは男性が行っていて、特に顔の印象を決める一番大事な目玉については当主しか入れないそうです。

松川だるまの特徴は、「仙台のだるまは青い」と某テレビ番組にも紹介された通り、だるまの前面は群青色と水色が塗られていて空や海を表していると言われ、金粉が散りばめられています。この群青色はそもそも武士の好んだ色とされ、八幡宮の御社殿の彩色にもふんだんに使われている高貴で高価な色です。

また、両目の大きな黒目も特徴の一つであり、「四方八方を見守り、魔を睨む」との願意が込められています。さらに、腹部には大黒さまや宝船等を「オキモノ」と呼ばれる張子にして立体的に飾り付けられている事も他のだるまと比べて特徴的な外見をもっています。背面は魔を祓うと言われる赤色で彩色され、側面には「寿」をデザイン化した梅の花が描かれ華やかさをそえます。

だるまの底には重心を下げ安定させるために「起きあがり」と呼ばれる土台をつけますが、これを厚くすることによりやや縦長のスタイルになります。

そのシルエットは一説によると脚を組み、両手を組んで坐禅をしている姿を模していると言われています。実はこの座禅を組んでいる姿には実在する人物がいることはご存知でしょうか。名を「達磨(だるま)」大師といい、1500年程前にインドは香至国の第3王子として生まれ、中国に渡って禅の教えを広められた方だと言われています。

「面壁九年」の故事は有名で少林寺において九年もの間、壁に向かって瞑想し続けて悟りを開いたと言われ、様々な困難にも耐える「不撓不屈」や、苦難から立ち上がる「七転八起」の精神は現代でも必要とされる心です。

間もなくお正月を迎え、御社殿前の鈴が一斉に鳴り響き境内は参拝者で賑わいますが、仙台ではお正月や松焚祭に当宮で「松川だるま」を受けることが慣わしとされています。

だるまは七転び八起きにちなんで、小さいものから順に8体並べて神棚にお祀りし、9体目からは毎年の松焚祭の御神火で御焚上げをして、参拝の帰りに1サイズ大きいだるまを受けるのが正しいとされています。

今年一年を振り返れば国の内外で様々な問題が起こり、また震災からの復興の目処がたたない地域も数多くありますが、いかなる困難からも起き上がり、壁のように動じない心で己にうち勝つ強い精神のだるまさんを見習いたいものです。

八幡宮Q&A

Q:神棚の祀り方について教えて下さい。

【お祀りの仕方】
神棚をお祀りする方角は、一般的には南向きか東向きです。南は日光が最もあたり、東は太陽の昇る方角だからです。そのため多くの神社が南か東向きに建てられています。
しかし、西や北が必ずしもいけないという訳ではありません。神棚をお祀りする際には、ご家庭のなかで最も清浄な場所を選びます。家族が毎日拝みやすく、大人の目線より高いところがよいでしょう。また、ドアや襖の上など人の出入りのある場所は極力避けます。

【お札の納め方】
神棚にはいくつか種類があり、代表的なものとして扉が3つの三社造、扉が1つの一社造があります。三社造の場合は中央に伊勢神宮のお札である神宮大麻を納め、向かって右側に氏神様のお札、左側に崇敬する神社のお札を納めます。
一社造の場合は一番手前に神宮大麻、次に氏神神社、崇敬神社と重ねてお札を納めます。


【お供えの仕方】
神棚には毎朝神饌(しんせん)をお供えします。基本となるものは米、塩、水の3種類です。お供えする際は、米や塩は単盃、水は水器という白い陶器製の祭器具を用います。三方(さんぼう)や折敷にのせるとなお良いでしょう。
お供えする際には、中央に米を、次に右に塩、左に水の順番で横1列に並べるのが一般的です。お供えしてからの参拝作法は、神社と同じで2拝2拍手1拝です。
お札は新年に際し、神棚をきれいにしてから神社から受けてお祀りします。今までお祀りしていたお札は、神社にお礼参りをして納めましょう。
当宮では毎年1月14日に松焚祭を斎行しております。当日来られない方は、御神火でお焚きあげができるように、事前にお納めください。