国宝 大崎八幡宮
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八幡さま便り

■24号

鳩の声

【写真】八幡さま便り22号  今朝見れば 早苗の末葉 露散りて         
           緑になびく 風の涼しさ   伊達吉村
 大崎八幡宮は藩祖伊達政宗公による御創建以来、歴代の仙台藩侯より篤い崇敬を受けて参りましたが、政宗公と共に多くの足跡を残されたのが仙台藩中興の英主として知られる第五代藩主・吉村公です。
  吉村公が仙台藩主の座を引き継いだのは今から約300年前、元禄16(1703)年のことでした。その頃の仙台藩は財政難を抱え、非常に苦しい時代を迎えておりましたが、吉村公は強い決意をもって内政改革に着手されました。その吉村公を誰よりも高く評価していたのが、江戸幕府第八代将軍徳川吉宗です。
  吉宗も当時、破綻しかけていた幕府を立て直すため、「綱紀粛正」と「文武奨励」「産業振興」を軸とする享保の改革を断行しており、同様の施策を進める吉村公と大変似た立場にあり、何よりもどちらも宗家の直系が絶えた為に、初めて傍流から入って後継者となったという大きな共通点があったのです。
 お互い、傍流から宗家を継いだが為に他の一門から反発、圧力があって相当な苦労を強いられたわけですが、そんな中で吉村公が模範と仰いだのは藩祖政宗公の姿だったのです。吉宗が幕府の初代将軍家康を模範としていたのは有名ですが、どちらも直接の曽祖父を心の支えとし、またその血筋を誇りに傍流という負い目に耐えたといえるでしょう。二人とも、その生涯の殆どを改革の為に費やしましたが、創業の曽祖父の背中を追った素晴らしい努力によって、仙台藩も幕府も一旦は政治・経済が再建され、平穏な時代を迎えることができたのです。
 今また政治・経済が破綻しつつあるなか、急務なのはやはり「産業振興」「綱紀粛正」「文武奨励」そのものでしょうが、やはり我々仙台人として大事なのは藩祖伊達政宗公創業の精神と、吉村公の中興の姿勢に学ぶことでないでしょうか。
 吉村公はまた、政宗公が当宮を仙台藩の総鎮守として創建された精神を継承され、三之鳥居の扁額や神功皇后の大絵馬の奉納、大元社の造営といった事業をはじめ、今に伝わるものだけでも『大崎八幡宮来由記』、大絵馬『曳き馬図』『舟弁慶図』、大元社の大元帥明王木像(仙台市指定有形文化財)等、数々の奉納を行われました。また現在屋根葺き替え工事により取り外されている長床の扁額も吉村公正室冬姫(久我内大臣通誠の娘)の叔父にあたる東大寺別当・安井門主道恕大僧正によるもので、吉村公が当宮を如何に重んじていたかを知ることができます。
 今、新緑に包まれている境内を歩きつつ、現代に良く似た危機の時代に良く対処した吉村公の足跡をたどり、その面影を偲んでみるのも良いかもしれません。  過去の遺物や自然は何も語りませんが、神道というより日本では古くから物事を「言挙げせぬ」ものとして、言葉では語りつくせない、また表せないものの中にこそ、本当の心が秘められている、という考え方があります。
     君がかく 言ふにつけても 言ひ知れぬ
           心の内に 心あるかな   藤原義孝

(あなたはそう言うけれど、私はあえて何も言い返さない。言葉で言い尽くせない、表せないものの中にこそ、まことの心はあるのだから。それを察して下さい…)
 当宮の境内にはまた、三代藩主綱宗公造営の二之鳥居(宮城県指定有形文化財)も残り、仙台藩や伊達家の息吹を色濃く残す『伊達の杜』として、現代の私たちの前に静かに広がっています。  時には静かな『伊達の杜』の中で、歴史の音に耳をすませてみてはいかがでしょうか。
 


八幡宮Q&A

Q:現在、長床の保存修理工事が行われていますが、どのような工事なのでしょうか?

A:当宮では来年の御鎮座四百年に向けて、平成11年度より「御鎮座四百年記念事業」として諸事業を推進して参りましたが、その中心事業として行われた「御社殿保存修理工事」はお蔭様をもちまして、昨年秋の竣工を迎えました。
 そこで、引続いての事業として、永年の風雨により破損の見られる長床屋根柿板の葺替え工事に着手することとなり、去る四月一日に工事着工奉告祭を齋行致しました。
 長床は割拝殿と称される様式の建物で、正確な建立年代を示す資料を欠くものの、手法上より寛文期(1661〜73年)のものと推定されています。構造は桁行九間、梁間三間の入母屋造(四方に庇を葺きおろす様式で宮殿建築に倣ったもの)で、屋根中央部に軒唐破風が附けられています。通路右側は以前授与所として利用されていた部分で、左側は神楽殿となっており、九月十四日に能神楽が行われる舞台です。
 昭和四十一年、国より重要文化財の指定を受け、昭和四十三〜四十五年にかけ解体修理を施した保存修理工事が実施されており、爾来三十年余を経て現在に至っております。
 今回の葺替え工事は、厚さ三ミリ程に手割りした秋田杉の板をずらしつつ葺き重ね、竹釘で留める形となります。竹釘は鉄と違い錆びる事が無く大変適しており、また葺き重ねた板の間に銅板を挿む事で、緑青の発生を促して柿板の腐朽を遅らせる効果があります。 なお、前回の工事では柿板に椹が用いられましたが、今回は御社殿と同じく杉を使用することと致しました。この中には、ご社頭にて皆様より御奉賛を頂きました柿板も含まれております。
 工事期間は本年八月迄の予定で、この間皆様にはご迷惑をお掛け致す事となりますが、何卒ご了解を頂きたく存じます。  当宮では今後共、来年に迎えます御鎮座四百年の佳年に向けて境内環境の整備等に尽力して参る所存でございますので、引続きご理解ご協力の程宜しくお願い申し上げます。

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