国宝 大崎八幡宮
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八幡さま便り

■20号

鳩の声

【写真】八幡さま便り20号「世の中の 憂きもつらきも なぐさめて 花の盛りは うれしかりけり」花 山 院

「花誘ふ なごりを雲に 吹きとめて しばしは匂へ 春のやまかぜ」飛鳥井 雅経

大崎八幡宮の境内にはソメイヨシノをはじめ山桜、八重桜、しだれ桜など多彩な桜が点在しており、花の散る頃ともなると境内は桜色の風に包まれます。そしてまだその余韻が匂い残る4月26日より5月6日まで、御社殿修理現場の一般公開が行われました。これまでも修理の折々に一般公開を行って参りましたが、今回の人出はこれまでを大きく上回り、11日間で実に6,500人を超える方々が拝観されました。中でも連休期間は行列ができるほどの盛況となり、公開のたびごとに案内をつとめ手慣れた対応を見せる役員総代、地区世話人や職方、そして私たち子鳩も周囲の関心の高さに驚きを隠せませんでした。
今回の公開の特色は真新しい柿板で葺き上げられた屋根の線と、長押上の華麗な装飾を間近に見ることができることでした。黒漆に彩り豊かな極彩色、ふんだんに金箔が用いられた装飾の輝きは言葉で言い尽くせぬ美しさであり、400年前に咲き誇った「桃山の花」を体感するに十分なものでした。
かの時代、太閤秀吉は華やかな時勢を背景に天下人の威勢を傾けて豪壮な文化を築きましたが、千利休はあえてそれに背を向け侘びの世界を打ち立てました。そしてふたつの文化精神の対立は利休の死という悲しい結末を迎えましたが、当時双方に親しい立場であった若き伊達政宗公はその一部始終をどんな思いで見詰めていたのでしょうか。
その答えは、この大崎八幡宮に示されているのです。外観を彩る豪華絢爛な装いは太閤秀吉の築いた「新時代の息吹=桃山文化」の申し子でありながら、御本殿奥深くの内陣は水墨画によって静かなたたずまいをみせるという、利休のこだわった「中世より引き継がれてきた静の世界」そのもの、また華麗な外観に包まれている御社殿と対照的に閑雅な姿をみせる長床のコントラストも意図的で、美しい調和を見せています。
プライドの高い都の人に『ダテ』という言葉をつくらせ、今では日本中に通用するまで定着させた政宗公ならではの粋な「答え方」という気がします。
平成の世では「個性重視」とのお題目による教育の結果、自分の考えに固まってしまい「他人の意見を聞いて学び、調和していく」ことのできない人々が増え、譲り合うことができずお互いを傷付け合うばかりで、社会を暗くしているようです。
政宗公は和歌や漢詩をよくし、茶道をはじめとする数多くの芸術に通じた文化人でしたが、いずれもその「形」や「理屈」にこだわらず「人と人とが調和できることにより、難しい物事もうまくまとめることができる」という「結果」を重んじていたようです。ゆえに「秀吉や利休のようにお互いを主張しあうのが文化ではない、文化とは嗜む(たしなむ)ものではないか」という気持ちだったのでしょう。
「嗜む」とは、「好んで親しむ」という姿勢で、政宗公の人生における姿勢はまさにそれに近いものでした。現代に生きる私たちも仕事や生活、勉強など何事も「好んで親しむ」気持ちを持ちたいものです。政宗公は御歳28の春、秀吉の「吉野の花見」に付き従い、

「むかし誰 深きこころの ねざしにて この神垣の 花を植えけむ」
 (この御社頭の桜の美しさは見事だが、これを植えた昔の人の心も奥ゆかしく思われてならぬ)

という和歌を詠まれました。既にこの頃から、自らも近い将来ふるさとに「桃山の花」を植え、花を咲かせたい、という気持ちが生まれていたものと思われます。
いま再び、政宗公の植えられた「桃山の花」は私たちの前に美しい花を咲かせようとしています。その鮮やかさに言葉を失っている私たちをみて、政宗公も微笑しておられるのではないでしょうか。


八幡宮Q&A

Q:大崎八幡宮で植林のボランティアを募集しているとの話を伝え聞いたのですが、詳しく教えて下さい。

A:今回の御社殿の保存修理に伴う調査の結果、御社殿に使用されていた木材の樹種が判明し、柱や梁、化粧材等はほとんどケヤキが使用されておりましたが、小屋裏など見えない部分についてはブナ、カツラ、アサダ、クリといった建築の構造材としては余り使用されない樹木が多く使用されておりました。
文化財建造物の修理の場合、腐朽した部材の補修には同じ樹種の木材が使用される為、今回のブナ、カツラなどの腐朽部材の繕い、交換には同種の大径木が必要となり、調達に非常な苦労事業遂行上その大径木が必要となり調達に大変苦労いたしました。
大崎八幡宮では、将来のご修理に要するこのような樹木の入手が更に困難になることが予想されることから、今回のことを教訓としそれらの苗木を植林し御用材として育成する事業を計画しております。
苗木の植林は平成十六年春に予定しておりますが、その際の植林作業、並びに向こう十年間は下刈り、枝打ちなどの作業が必要となり、ご一緒にお手伝い頂けるボランティアを募集しております。
一〇〇年後のご修理の御用材として植林された苗木が、大きな『文化財の杜』に育ちますよう、新たな森創りへご一緒にご参加頂けませんか。
尚、植林場所としては蔵王山麓に約五、〇〇〇坪を確保、植栽樹木としてブナ、カツラ、ケヤキ、カラマツ、ヒバなど約五、〇〇〇本が予定しており、平成十六年春(四月〜五月)頃に植林できるよう現在諸準備を進めており、本年度(平成十五年度)の事業として(1)用地の整備(2)苗の確保(3)植林ボランティアの募集、といった計画が立てられております。
祖先の残した貴重な文化財を私たち自身の手で未来の子孫に守り伝えていく為のこうした事業は二十年毎の式年遷宮を行う伊勢神宮をはじめ、全国各地の由緒ある神社において行われておりますが、趣旨ご理解の上ご協力頂きたく、お願い申し上げます。
尚、ボランティア登録をご希望される方は、当宮社務所までお申し込み下さい。

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