国宝 大崎八幡宮
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八幡さま便り

■13号

鳩の声

【写真】八幡さま便り13号「昨世にふるは くるしきものを 槇の屋に やすくも過ぐる 初時雨かな」二条院讃岐

「ふればかく 憂さのみまさる 世を知らで 荒れたる庭に つもる初雪」紫式部

月日は流れてしまうとあっという間と感じられるもので、今年も早いもので残すところあとわずかとなり、境内に降りはじめたつめたい時雨にぬれる八幡宮の鳩の耳にも、時折「今年の十大ニュース云々」などという声がチラホラと聞かれるようになった。
近頃は特に、過去に例の無いひどい事件や犯罪が頻発している。しかし、それも一定期間問題提起をしたのみで、ほとんどがその原因の究明も事態の解決もないまゝ、ウヤムヤのうちに風化してゆくばかりである。それは、余りにも次々に大きな事件が起こる為なのか、それとも我々の社会というものに対する姿勢が、年を追う毎に麻痺してしまっている為なのか。答えは容易には出ない。
たゞ、確実にいえることは、かなり多くの人が今の日本及び日本人のありかたと今後の展望について、少なからぬ憂慮と危機感を持っている、ということである。しかも、各種調査で既に明らかにされている通り、過去を知る年配層のみならず、若年層においても社会の先行きについて大半が不安を感じている、という他国に類を見ぬ深刻さが現実にある。
かつて、室町時代後期より戦国時代に至る約130年間は、日本史上空前の大混乱期であった。秩序は崩壊し、人心風紀は乱れた。それは東北地方においてもしかりであったが、その混乱に終止符を打ち、新秩序を樹立したのは、言うまでもなく仙台藩祖伊達政宗公であった。
周知の通り、大崎八幡宮の御社殿は藩祖公による仙台城下の都市づくりの象徴として、当代一流の工匠たちの手によって成り、今なお絢爛豪華な桃山文化の現存最古の遺構として、仙台藩草創期の息吹を現代に伝える国宝建造物である。しかしながら、先年行われた調査の結果、再び大地震に見舞われた場合は倒壊の危険性もある、ということが明らかとなった。
暗い世相を象徴するように、近いところでは台湾大地震が起きている。宮城県沖地震によって多大な被害を受けた仙台にとって、これは対岸の火事ではない。
こうした現状を踏まえ、御社殿の修理保存事業が来春より平成18年・御鎮座400年の節目の年を目指してはじまる。言うまでもなく、この大事業はその歴史的・社会的重大性から見て、大崎八幡宮のみの問題では無い。それは、藩祖公の御偉業の継承を旨として「杜の都」の更なる発展・繁栄を願う仙台市民はもとより、美しい日本の伝統文化を子孫に伝える志を持つ全国の方々も一丸となっての壮大稀有な歴史的事業であり、まもなく開府400年の佳年を迎える100万都市・仙台にとっても、忘れ得ぬ記念碑となるであろう事は、間違い無い。
冒頭に掲げた和歌は共に初冬の景に心情を託し、まゝならぬ世の中を嘆きめそめそしている平安時代の女官の和歌である。今我々は、現実逃避してぼんやりしている時では無い。むしろ

「奥山の おどろが下も 踏み分けて 道ある世ぞと 人に知らせむ」
後鳥羽上皇

「大空に そびえて見ゆる 高嶺にも 登れば登る 道はありけり」
明治天皇

といった、日本固有の美しい伝統文化と精神を護持・継承しつゝ、新秩序の確立に向け万難を排し邁進しようとする不退転の力強い決意宣言こそが必要なのではないだろうか。
また藩祖公は、仙台入府の折りにその弥栄を祈念し

「入りそめて 国豊かなる みぎりとや 千代とかぎらじ せんだいの松」
伊達政宗

という和歌を詠まれた。
八幡宮の鳩も、初冬の寒さにぶるぶる震えてはいられない。微力を傾けてこの大事業に資する所存である。


八幡宮Q&A

Q:大崎八幡宮では、間もなく大崎八幡宮で五年間の予定で御社殿の解体修理工事が行われると聞いておりますが、その間正月の初詣や松焚祭、九月の例大祭などは今まで通り行われるのでしょうか。

A:大崎八幡宮の御社殿の保存修理工事は、平成十一年度より五カ年の予定で国庫補助事業として開始されます。
予定としては、平成十二年の二月に祭典や祈願等を行う仮殿の新築工事を行い、三月にご本殿から御神体(おみたま)をお遷しする仮遷座祭を斎行致します。それと同時に御社殿に保存修理工事のための覆屋(鞘堂)を建て修理工事に入る予定です。
そして来春四月以降に、御社殿内部の彩色の剥落止め作業を中心に内部保存を進めながら、屋根の解体、そして内部調査を行い傷み具合や修理方針を再度検討する予定でおります。
ご質問の、御社殿の保存修理工事の期間中の祭典神事は、御社殿の前に新築の仮殿にて執り行う事となりますが、お正月の初詣や松焚祭裸参り・九月の例大祭神輿渡御などを始め恒例の祭典神事、普段の厄祓い・交通安全や七五三詣で等のご祈願など、今まで通り行う予定でおりますので、ご安心してお参り頂きたいと思います。
来春よりの御社殿の保存修理工事が開始されれば、現社殿は覆屋にて覆われるため皆様の目に触れることは出来なくなり、当宮としても非常に残念なことではありますが、ご承知の通り御社殿は国宝建造物として、市民県民はもとより我国国民の貴重な財産でもあり、この御社殿をより長く、より麗しく次の世代に引き継ぐことが重要な責務と考えており、平成十八年にはご鎮座四百年を迎える、お八幡様の御神威の発揚にとっても欠くべからざる事業と位置付けておりますので、なにとぞご理解頂きたいと思います。
保存修理工事は平成十五年度にて終了と予定しており、順調に進めば十五年九月の例大祭は装いも新たになった御社殿にて盛大に斎行されることとなりますので、それまでしばらくの間見守って頂きたいと思います。
また、社殿保存修理事業に引続き、境内周辺の整備事業等を行い、平成十八年には御鎮座四百年の奉祝記念大祭も斎行する予定でおります。

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